実家に帰って桐箪笥のなかを整理していたときに、出てきた数枚の濃い黄色の風呂敷。
微妙に違う色もあるけど、どれもかつて実家の呉服屋の”カラー”でもないし、一体これはなんなんだろうか。
ある日初めて一人で訪れたある呉服屋さんで長襦袢を誂えてもらおうと店内で反物を見させていただいていると、やっぱり同じ色の濃い黄色の風呂敷が反物の上にかけられていました。
思わず、「その風呂敷、元呉服屋である実家にたくさんありました!」と店主に伝えると、「呉服屋で使う風呂敷は大抵この色なんです。これは実は防虫の効果があるんですよ」と教えてくれました。
早速帰ってから調べてみると、この濃い黄色は「鬱金(うこん)」と呼ばれる色で、「ショウガ科ウコン属の多年草の植物」だそうです。
別名ターメリック。なるほど、たしかにカレー粉の色と同じです。
この鬱金色は、防虫防菌効果があるとされ、着物箪笥のなかに敷いたり、着物を包んだりするのに昔から使用されていたそう。
たしかに見つけたときも、着物を畳紙ではなくこの鬱金色の風呂敷で包んでいました。
「ウコン」というと”二日酔いに効く”というイメージがありましたが、この色にはちゃんと意味があったんですね。
そして小説『あきない世傳 金と銀』を読んでいると、この鬱金染めの風呂敷の話が出てきました。
「鬱金は、本来は薬だす。胃や肝、胆を整えてひとを健やかに保つ、えらい効き目のある薬だすのや。それを染めに使うてるさかい、老若男女問わず、お薦め出来るんだす。しかも、虫よけに効きますよって、私らも鬱金染めの布で反物を包むんだす」
『あきない世傳 金と銀』より引用
たしかにこの番頭が言っている通り、自然素材なので人体に影響がなく、そして着物も虫から守ってくれるという優れものです。
いつからこの鬱金染めの風呂敷が使われていたのかわかりませんが、きっと昔から賢い智慧で使われていたのでしょう。
そしてこの昔ながらの智慧が生かされた鬱金染めの風呂敷は、自然素材で染められていて何度も繰り返し使える使える環境に優しいアイテム。
私の手元にある鬱金染めの風呂敷たちも、もう何十年も前につくられたものです。
そんなサステナブルな風呂敷をこれからも使い続けていきたいと思います。