母が約30年ぶりに再会した思い出のきもの

最近、母の姉である叔母が着物を着始めた。

近く行われるコンサートに着物を着ていきたいということで本当ならば着付けなど手伝ってあげたいが、遠くに住んでいるのでなかなか直接会うことができない。

着付けた写真をLINEで送ってもらいながら、元呉服屋の母とともに微力ながらアドバイスを送っていた。

そんなときに、お墓参りなどもあって実家に帰ることになり、そのついでに母と一緒に叔母のもとを訪れた。

 

叔母の家を訪れる車中、叔母の着物はどういうものかなあとワクワクしながら母に聞いてみた。

「うちで買った着物はあるのかな?」

「一枚だけかなあ」

私の実家はもともと呉服屋だったが、私が幼稚園の頃には呉服屋をやめてしまったので、一体どんな着物を扱っていたのか全く記憶にない。

またうちに多少着物はあるが、それでももっと知りたいという気持ちが強い。

もし叔母がうちで買ってくれていた着物を持っていたら、、、と期待していたが、それでも着物が観れることはとっても嬉しい。

 

 

長い長い運転のあとにようやく久しぶりに元気な叔母と会うことができた。

着物の状態や組み合わせなど確認してみようということで、叔母が箪笥から畳紙に入った着物を持ってきてくれた。

一枚目は桜柄の紬でとてもかわいらしい。

二枚目は事前に写真でも見ていた、墨黒のようなグレーがかった上質なちりめんで渋くてかっこいい。

どちらもうちで買ってくれたものだった。 

最後にまたもう一枚持ってきてくれ、畳紙を広げてみたところ、、、

「わあ〜、こんなのあった。たしかに、これはうちで扱ってた人気の着物。これも買ってくれてたなんて、なんで覚えてないんだろう、全然記憶になかった」

母は大変驚きながら、どこか懐かしいような表情で見ている。

その着物は深い緑の色無地に、ところどころ刺繍が施されているもので、品が良くとてもオシャレな一枚だった。 

叔母が約30年前に購入してくれた着物

「定番商品で人気だったんだよね。この色は絶対おばあちゃんが選んだね、思い出してきたけどたしかこの色ならずっと使えるよって接客していたような」

 

叔母が購入したのは私が幼い頃だったので、約25~30年前。

そんな昔の着物を母はいつの間にか忘れていて(特に着物についてはその後の生活が大変すぎたのか、忘れてしまっていることが多い)、思いがけない再会となった。

 

うさぎや梅の刺繍がかわいらしく、深みのある緑のちりめんはとても上品でいつまでも着れる飽きのこない色。

まさに叔母にぴったりの色で、なるほど、セレクトした祖母はやっぱりセンスがあったんだなとつくづく感じる。

そして祖母なき今、こうして母と二人で祖母が選んだ叔母の着物を眺め、叔母に着付けのコツを微力ながらもアドバイスさせて頂いていることに改めて感謝の気持ちでいっぱいになった。

 

 

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