桜の小紋を着たら和カフェの店員に間違えられた話

着物を着始めて間もない頃、着物を着て出かけたないのになかなか気軽に出かけられる場所がなくて、さてどこに行こうと悩んでいたことがあった。

着付けに慣れるには回数を増やさなければいけない。

これはもう近場に着て出かけてみよう。

そうして、家から歩いて約15分ほどの和カフェに夫と行ってみることにした。

夫に着物で行ってみると言うと、さすがに和カフェでもそれは浮くでしょと言われ、少しひるんだ。

着物に関しては、いつもあんなに応援してくれているのに、いざとなれば人の勇気を邪魔するのか、、、

 

夫の妨害に負けず、一度気を引き締め直して着物を着た。

でも一緒に行く恥ずかしがり屋の夫に配慮して、地味めな着物を着ていくことにした。

選んだのは、桜柄の黒い小紋。

この着物はひいおばあちゃんのもので、かつて実家の呉服屋で包装紙やショッピングバッグとして使用していた、思い入れのある柄だ。  

黒い桜の小紋に黒い八掛

この着物にこれまた地味めな半幅帯を締めて、ちょっとでもオシャレにしたくて帯締めも締めた。

さあこれで地味だけど、まあまあ着付けもうまくできたしOK!と気分上々で家を出た。 

  

半幅帯と帯締めでアクセントを

 

しかし、そんなウキウキな気分もすぐに不安な気持ちに、、、

家の前を歩いていたおばあちゃん3人が着物を着た私を見つけるとはて、と立ち止まり、上から下まで眺めている。

(この子はなんで着物を着ているんだろうと思っているんだろうか。もしくは着付けどこか間違ってる?はたまた、若い子が着物を着てるなんてと嬉しく思ってくださってる、、、?)

そんなことを心の中で思いながら、気持ちを切り替えカフェへの道を急いだ。

 

その日は思ったよりも風が強く、歩いていると八掛がチラチラと見えて、これも着物の美しさだなあと微笑ましくなる。

よし!大丈夫大丈夫、地味めな着物だし着崩れもしてないし。

とにかく今日の目標は着物で和カフェに行くんだ!

 

そんな思いで歩いていると和カフェに着いた。

着いたのはお昼ちょうど前で、入り口には何組かすでに待っているお客さんがいた。

「まあせっかくだし、待ってよっか」

リストに名前を書き、お店の前のベンチに座って待っていた。

とその時に、ある女性が私を見て近づいてくる。

(着物素敵ですねとか言われるのかしら、、、)

念願のカフェに着いて目標を半分くらいクリアした気持ちでいた私はすっかり自信に満ち溢れていた。 

すると、女性はおそるおそる、、

「あの、、、店員さんですか?どのくらい待ちますか」

え!?私着物着てるから店員さんだと思われてる!?

「いえ、お店の人ではないです、、、!」

とても恥ずかしい気持ちになりながら急いで答えた。

周りで待っている人たちもそのやりとりを聞いている。

夫は苦笑いしながら「ああ、着物着てるから、、、」とぼそっと隣で言う。

 

その後順番が来るまで待ち続けるしか他に方法はなく、とても気まずい気持ちになりながらも、やっとお店に入ることができた。

 

これはもう美味しいのを食べるしかない!と一番高いメニューを頼み、まあこういうこともあるさと気分を変えようとしていると、

「あの、こちらお着物汚れないようにお使い下さい」

と”本物の”店員さんがナプキンを持ってきてくださった。

わあ、着物を着ているとこんな気遣いをしていただけるのか。

そこでやっとその日着物を頑張って着てきてよかったと思うことができた。

 

 

元呉服屋の娘でも、こんなに着物を着ることに勇気がいるし、店員さんに間違えられるという経験もある。

もっと気軽に着物を着れる環境になってくれればなあと思いながら、結局は自分の意識の問題だなと考えさせられる経験でもあった。

そしてこれを機に、目立たないように、、、と地味で無難な着物にせず、自分の着たい着物を思い切って着ようと心に決めた日でもあった。

 

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